『事業仕分け』から何を学ぶ? (2)

毛利衛さんが館長を勤める日本科学未来館の業務でも明らかになったように、今回の事業仕分けにより、同じような業務が複数の行政機関で行なわれているという事実も分かった。このような縦割り社会のひずみによる税金の無駄遣いは、行政の随所にあるといってもよい。過去の業務改善により表面的には組織の合理化が進んだように見えるのだが、実質は天下り先や民間の関連企業にコスト要因が移動しただけのことだ。国民にとっては何の利益も得られない業務や組織が増え、毎年、見直されることなく国民の血税がただただ無用に使われて来たのが実態である。

今回の事業仕分けの対象となった事業は、各省庁の全事業のごく一部に過ぎないという。100年に一度という大不況のせいもあってこれ以上の事業廃止や事業削減は経済成長の妨げにもなるという風評も台頭してきはじめ、その後の行革の動きは今一つ見えて来ない。行政に携わる一人ひとりが、自分の業務を見直し、『本当に国民のために価値のある仕事であるか』『さらに価値を上げるためには何をどうするべきか』『そのプロセスを見直した上で、どのような体制で行えば無駄がなく効率よく行なえるか』といったことを自問自答するしかない。それを組織全体に拡大していって始めて、20年前の欧米諸国に追いつくことになる。

行革そのものは、本来、1回限りのTVパフォーマンスであっていい訳がない、国民のために仕事をする人達にとって、自身のお客様価値の向上に向けて常に改善と改革を続けていく永い道のり(=プロセス)そのものが、行革なのである。今回、明らかになったプロセス上の欠陥に気付いたならば、直ぐにそれを修復し(改革し)、継続的にそのループを実行していくしかない。そのような根本のプロセス改革なくして、小手先の説明・弁明のために時間と税金が使われるようでは、この国の財政はさらに破綻に傾く。

このことは、国政・行政だけでなく、企業においても当てはまる。今は不況の影響を受けて、大手も中堅も、イベント・プロジェクト・出張・広告宣伝・投資、さらには新規採用に至るまで、あらゆる企業活動で「凍結」「休止」 「削減」が実施されている。予算は見直しの度に、縮小されている。これも、本来のプロセスのあるべき姿の議論が十分でないから、見直しにばかり時間を使い、本来のやるべきことが見えてないのだ。今後、「事業仕分け」という言葉だけが独り歩きして、さらに「凍結」「削減」の嵐が吹き荒れないことを節に願いたい。

カテゴリ:コラム 更新:2009年12月15日

「事業仕分け」から何を学ぶ? (1)

『事業仕分け』のニュースが、連日、マスコミで取上げられ、インターネットで世界にも配信された。これまで闇に隠れていた国家予算の策定プロセスが見える化された意義は非常に大きい。また、国民が税金の使われ方に関心を持ち、Tax Payer意識を向上させたことの意義も測り知れない。これらのプラス効果に反して、「科学技術の分からない文系の人達が簡単に予算削減していいのか」「まず国家ビジョンが示された上で、議論すべきではないか」等々、マイナス意見も百出した。このような真剣な議論が沸騰しただけでも、改革の一歩にはなった。

よくよく考えてみると、今回の事業仕分けで論議された内容は、そもそも各省庁の予算策定プロセスの中で徹底議論されて然るべきことである。その意味では、日本の改革は、行革先進国に比べて20年近く遅れているといってもよい。20年前、ベルリンの壁が崩壊した頃、日本はバブルの絶頂期にあった。当時の日本の一人勝ちを目の当たりにした欧米諸国は日本のカイゼン手法を徹底研究した。日本と同じ改善レベルでは日本に追いつけないことを悟った欧米諸国は、全てのプロセスを根本から抜本的に見直し、日本の達成レベルを飛躍的に超える改革手法としてリエンジニアリングを開発し、一般企業は勿論のこと、行政の世界でも徹底した業務改革が進んで行った。

価値を生んでいない業務があれば、“お客様視点”や“国民視点”から抜本的に見直して、「削除(廃止)」「簡素化(削減)」「統合」「移動」「IT化」が行なわれたのである。20年前に、である。日本は、それから「失われた10年(既に20年とも言われ始めている)」に突入し、リエンジニアリングによる業務プロセス改革よりも、リストラによるコスト削減・人員削減に走った。今回の業務仕分けで、ようやく、“お客様視点”や“国民視点”が叫ばれたが、いきなり、廃止や削減に進む前に、本来ならば、あるべきビジョンを実現するために、あるべき業務プロセスの議論があって、その結果として、凍結や削減が決定されるべきである。

今こそ、本来の予算策定プロセスそのもののあるべき姿を論ずるべき時なのだが、今度は議員の質問に答えるための情報武装した(そのプロセスでも税金が使われる)官僚達との茶番劇を次回も見せられることになりかねない。予算策定プロセスに限らず、全省庁の全業務のあるべき姿を国民目線で徹底的に見直せば、プロパガンダ的な一時的コスト削減成果だけでなく、国民にとっての真の価値拡充と同時に、より大きなコスト削減は自ずと実現できる筈である。 Fotoralame

カテゴリ:コラム 更新:2009年12月12日